認知症の種類

認知症には大きく分けて4つの種類があります。

①アルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type)

②脳血管性認知症(Vascular dementia)

③前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia;FTD)

④レヴィー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)

①アルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type)

認知症の4つの型の中で1番多い認知症です。アルツハイマー型認知症は、ほとんどが孤発性(遺伝が原因ではない)ですが、少数ではありますが遺伝が原因の例もあります。

病気の概要:脳そのものが全体的に萎縮してきます。これに伴い、脳内では神経細胞の死滅や老人斑の出現、神経原線維の変化が起きてきます。専門的になりますが、健常者の脳内では、アミロイドβタンパク質というタンパク質が存在し日々、代謝を繰り返してます。しかし、アルツハイマー型認知症では、アミロイドβタンパク質の代謝過程に問題が生じて異常なアミロイドβタンパク質が出現します。その結果、脳内で異常なアミロイドβタンパク質が溜まり続けることで神経細胞が死滅し、老人斑が出現します。さらに、タウタンパク質という物質が異常にリン酸化され、神経細胞内の輸送に障害が出ることで細胞死を引き起こします。

病気の症状:アルツハイマー型認知症では、中核症状周辺症状に症状が分かれます。

中核症状では、近時記憶(最近の出来事)の障害がまず起こります。例えば、鍵の戸締まりやガスの消し忘れ、食事の内容が思い出せないなどがあります。特にエピソード記憶(例えば、昨日の昼食をどこで誰と何を食べたかなど)は必ず障害されます。見当識についても、特に時間の見当識(今が何月何日など)が発症初期から失ってきます。その後、緩やかに記憶・知能が低下し、自発性の低下やうつ病、不穏や多動、短気など人格が変化していきます。

周辺症状では、せん妄という日々の態度が変化してきます。特に、昼夜逆転したり夕方になると落ち着かなくなったりしてきます。さらに、幻覚や妄想が出現し「もの取られ妄想」や「被害妄想」などが現れます。他にも徘徊を認め、家族が気づいたら玄関から1人で歩いて出ており、そのまま帰ってこれなくなることがあります。アルツハイマー型認知症の中核症状と周辺症状では、周辺症状の方がはるかに家族や介護スタッフの介護負担が大きく問題になっております。

②脳血管性認知症(Vascular dementia)

病気の概要:その名の通り、脳の血管の病気が引き金となって起こる認知症です。特に脳梗塞(脳の血管に血の塊などが詰まり、脳組織が壊死していく病気)によることが多いです。脳のどの部位で脳梗塞が起きるかにより症状は分かれてきますが、アルツハイマー型認知症と比較し突然発症する事が多いです。また、片麻痺など身体的な症状も出現する事もあります。

病気の症状:アルツハイマー型認知症では、全体的に認知機能が障害されるのに対して脳血管性認知症は、一部の認知機能のみ明らかに低下するといった症状が起こります(例えば、計算が著しくできなくなるなど)。他には、怒りやすくなったり涙もろくなったりといった感情失禁という症状やうつ傾向、夜間せん妄などがあります。

③前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia;FTD)

病気の概要:脳の前方(前頭葉)と側方部分(側頭葉)の萎縮が進行し脳全体の萎縮が強く進みます。そのため、健常者の脳の重さが1200〜1500gに対して1000g前後まで減少します。最も低下した例では、700g前後のこともあります。このため、脳細胞が大きく死滅します。

病気の症状:反社会的な行動や自己中心的な行動が目立ち、今までの性格と異なる人格変化が出現します。その一方、発症初期では認知機能は保たれます。少しずつ言葉の障害が現れ、喋りにくくなったり物品の名称が言えなくなったりします。

④レヴィー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)

病気の概要:脳の中にレヴィー小体(異常なタンパク質が神経細胞に溜まったもの)が多数出現します。特に脳の後方部位(後頭葉)に多く出現します。脳の萎縮は、アルツハイマー型認知症に比べて比較的少ない事が多いです。

病気の症状:発症初期から幻視を認めるのが特徴です。亡くなった親戚の人が見えたり小動物が見えたりなどがあります。認知機能は緩やかに進行してきます。運動機能においては、起き上がりや歩きにくくなるなどパーキンソン症状が出現してきます。

これらの認知症の症状は多岐にわたるので、検査やカウンセリングなどから認知機能を正しく検査していく必要があります。現状、認知症に対する特効薬は存在しないため、我々のサポートもとで、ご自分の認知機能を正しく知り、今からでも認知症にならないように予防や発症を遅らせる取り組みが重要になってきます。

Dr. KAZU

医学博士
脳卒中などの脳の病気について研究を行い、世界で初めて脳卒中の病態の一部を解明する。
多くの認知症患者と接するうちに、認知症の予防がとても重要であることを肌身で感じ、自身の研究や経験を通じて、広く多くの中高年の方々の認知症を防ごうと決意。
その為、可能な限り認知症の発症を抑制することで、健康寿命を伸ばし活力のある人生を全うすることを目的にBrainHealth Innovations(ブレインヘルスイノベーションズ)を立ち上げ、日本政府が掲げる「認知症施策大綱」を推進する取り組みを始める。

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